1. 目的
脳画像解析で、対象となる領域は脳実質でありその他の骨・筋・脂肪・眼球等の組織は、解析する上でノイズとなる。そのため、解析精度を高めるには頭蓋を除去することが重要である。
この記事では、FreeSurferを用いて頭蓋を除去する方法を解説する。
- FreeSurferを用いた頭蓋除去
2. コマンド
ここでは、FreeSurferの関数であるrecon-all
コマンドを用いて、頭蓋を除去する。
基本的な使い方は、次の通り。
# FreeSurfer作業ディレクトリを指定 export SUBJECTS_DIR=<PATH> # Autorecon1を実行 recon-all -subjid <被験者ID (任意)> -i <入力画像 (3D-T1WI)> -autorecon1
Autorecon1では、以下の処理を実行している。
- 動き補正(同一被験者の3D-T1WIが二つある場合には、平均画像を生成)
- Talairach変換
- 信号ムラ(バイアス)の補正
- 信号値の正規化
- 頭蓋除去
3. 使用例
頭蓋除去前の3D-T1WI(T1w.nii.gz)に対して、recon-all -autorecon1
コマンドを実行する。ここでは、被験者ID(-subjid)を「Subj001」にした。これは、自由に変えてもよい。
# FreeSurfer作業ディレクトリを指定 export SUBJECTS_DIR=$PWD # Autorecon1を実行 recon-all -subjid Subj001 -i T1w.nii.gz -autorecon1 # Autorecon1で作成した頭蓋除去済みの脳マスク画像(brainmask)をNIfTIに変換 # ただし、元画像(T1w.nii.gz)と同じヘッダー情報を参考に(--likeオプション) mri_convert Subj001/mri/brainmask.mgz brainmask.nii.gz --like T1w.nii.gz # 元のT1WIにbrainmaskを適用 fslmaths T1w.nii.gz -mas brainmask.nii.gz T1_skull_stripped.nii.gz
recon-all
での処理が完了すると、被験者IDディレクトリ(Subj001)が生成され、このディレクトリ内に処理された結果が保存される。
Subj001/ ├── label ├── mri │ ├── T1.mgz │ ├── brainmask.auto.mgz │ ├── brainmask.mgz │ ├── mri_nu_correct.mni.log │ ├── mri_nu_correct.mni.log.bak │ ├── nu.mgz │ ├── orig │ │ └── 001.mgz │ ├── orig.mgz │ ├── orig_nu.mgz │ ├── rawavg.mgz │ ├── talairach_with_skull.log │ └── transforms │ ├── bak │ ├── talairach.auto.xfm │ ├── talairach.auto.xfm.lta │ ├── talairach.xfm │ ├── talairach.xfm.lta │ ├── talairach_avi.log │ ├── talairach_avi_QA.log │ ├── talairach_with_skull.lta │ └── talsrcimg_to_711-2C_as_mni_average_305_t4_vox2vox.txt ├── scripts │ ├── build-stamp.txt │ ├── lastcall.build-stamp.txt │ ├── patchdir.txt │ ├── recon-all-status.log │ ├── recon-all.cmd │ ├── recon-all.done │ ├── recon-all.env │ ├── recon-all.local-copy │ ├── recon-all.log │ ├── recon-config.yaml │ └── unknown-args.txt ├── stats ├── surf ├── tmp ├── touch │ ├── conform.touch │ ├── inorm1.touch │ ├── nu.touch │ ├── skull.lta.touch │ ├── skull_strip.touch │ └── talairach.touch └── trash
頭蓋除去された画像は、「Subj001/mri/brainmask.mgz」にある。brainmask.mgz画像は、頭蓋除去済みの脳画像であるが、信号値の階調が0~225に圧縮(正規化)されてしまう。そこで、このbrainmask.mgzをマスク画像として扱い、元の3D-T1WIのマスク処理(マスキング)として適用する。
結果
処理前後の画像は次の通り。
いつもお世話になっております。
3D T1強調像で、大脳の白質と大脳皮質灰白質のsegmentation を行い、マスク画像を得る方法を教えて頂けますでしょうか。
このマスク画像を行いたいのはどのような理由でしょうか?それによって回答が変わるので。
下の論文の4-5ページに記載の解析法で、マスク画像を用いてフラクタル解析をしたいと思います。
お手数をおかけしますが、お願いいたします。
Front. Hum. Neurosci. 17:1231513.
doi: 10.3389/fnhum.2023.1231513
論文を見てみてから返信します。業務がたまっているのでしばらくかかってしまうかもしれません。
論文を読みました。
フラクタル解析は、
https://github.com/chiaramarzi/fractalbrain-toolkit
を用いており、マスク画像というのは、シンプルにFreeSurferの前処理で、QCとしてmanual editingをしているだけのように読めます。
上記のフラクタル解析のツールを見ると、特にマスクが必要と書いていません。
ご確認いただけませんか?
お返事ありがとうございます。
すみません、リンクを確認していませんでした。
つまり、Recon all を行って、aparc+aseg.mgzを使うのですね。
そうですね。recon-all を行ったディレクトリを指定するので、aparc+aseg.mgzも含めて使用されるのだと思います。
ピングバック: 【FSL】 FSLを用いたRF/B1バイアス(信号ムラ)補正とセグメンテーション
ピングバック: 【FSL】大脳基底核のセグメンテーション